お役立ち情報
自己破産と預金通帳~裁判所に提出する上での注意点
多くの人は、給料の振込や家賃などの引き落としのために銀行口座を利用していると思います。
自己破産の申立てをするにあたって、過去2年間以内に銀行口座を持っていたことがある場合、その口座の預金通帳、もしくは取引明細書を、資料として裁判所へ提出しなければなりません(裁判所によっては、2年よりも長い期間の通帳の提出を求められることもあります)。
入出金履歴のうち、裁判所から質問を受けた部分に対しては、正直に説明する必要があります。
ここでは、裁判所へ通帳を提出する上での注意点などを、弁護士が解説していきます。
1 自己破産で通帳を提出する意味
まず、自己破産において何の為に通帳を提出するのか、また、何を確認するのかを詳しく知っておきましょう。
⑴ 債権者に分配するための残高報告
自己破産では、債務者が所持している財産のうち一定の評価額を超えるものを換価し、売却金を債権者に分配したうえで、残った債務は支払いを免除します。
銀行の預金残高は、この分配すべき財産として「財産目録」に記載し裁判所に報告する必要があるのです。
たとえ残高が0円であっても、長らく使っていない口座であっても、それを証明するために通帳の提出が必要とされます。
逆に、裁判所に提出しなければ、財産を隠しているのではないかと疑われ、場合によっては免責不許可となってしまうリスクもあります(詳しくは後述)。
したがいまして、預金に関する情報は必ず報告しなければなりません。
なお、自己破産によりすべての預貯金が処分されるわけではありません。
裁判所の運用にもよりますが、一般的には合計20万円以下の預貯金は自己破産をしても手元に残しておくことができます。
⑵ お金の流れの確認
自己破産手続きにおいては、自己破産する人が銀行口座を利用して過去数年間にどのようなお金の出し入れをしてきたのかを報告する必要があります。
すなわち、過去に金銭を他人の口座に送金して財産隠しをしていないか、多量のお金を引き出して浪費やギャンブルに使っていないか、などを確認するのです。
なお、原則として、自己破産は個人の問題であり、本人以外の通帳(同居家族のものなど)を提出する必要はありません。
しかし、公共料金等の支払を配偶者など同居家族名義の口座で行っている場合には、その口座から支払があったことを証明するために家族の通帳の提出を求められる場合があります。
- 【過去2年間以上、まったく取引がない場合】
-
入出金がない口座であっても、通帳を提出しなければなりません。
提出することで過去に取引がないことを証明することができます。
2 通帳がない・記載が正確ではない場合
通帳を紛失してしまった場合や、そもそも通帳を発行していないインターネットバンキングの口座を持っている方は、「取引明細書」の提出が必要です。
通帳紛失の場合は、銀行窓口で取引明細書の申請することが多く、ほとんどの銀行が後日郵送してくれる対応になっています。
インターネットバンキングの場合は、銀行ホームページからログインし、取引明細書をプリントアウト(出力)できる銀行が大半です。
また、通帳をマメに記帳せず、数か月空いてしまうと、入出金の取引が合算されてしまいます(いわゆる「おまとめ」記帳)。
おまとめ記帳されている箇所が、直近2年以内の場合、通帳紛失の場合と同じように銀行窓口で取引明細書の発行を申請する必要があります。
また、一度通帳を提出しても自己破産の申立てまで時間を要したり、裁判所から最新の通帳の提出を求められたりすることがありますので、少なくとも自己破産の手続中は、通帳が「おまとめ」にならないよう、一定期間ごとに通帳記帳することをおすすめします。
- 【提出するのは通帳のコピーで可能】
-
ここでは「通帳」と表記しましたが、実際提出するのは通帳そのものではなく、「通帳の写し(コピー)」です。
通帳のコピーは、必ずしもすべてのページのコピーが必要というわけではなく、また、コピーのとり方なども決まっています。
当法人では、依頼者様が通帳をコピーするのは大きな労力を要すると考えていますので、事務所でコピーをすることもあります。
また、少しでも手続を円滑に進めるべく、裁判所に申し立てをする前に、提出する通帳の入出金をすべて確認し、裁判所から説明を求められそうな箇所についてはあらかじめ報告書を作成して裁判所へ提出しています。
3 通帳を隠す・提出しないとどうなる?
「ギャンブルに使うため一気にお金を下ろした履歴がある」など、ご自身に不利な記載がある場合、通帳を提出したくないと考えることもあるでしょう。
単に「長い間使っていない通帳だったので忘れてしまっていた」という場合、申立て後に追加提出をすれば実務上問題は起きにくいです。
しかし、もし自己破産に際して意図的に通帳を隠す・提出しない場合、それは「財産隠し」に該当します。
財産隠しは「免責不許可事由」となります。(破産法252条1項1号)
悪質な免責不許可事由の場合、免責が許可されない(自己破産に失敗してしまう)可能性があります。
自己破産に失敗してしまうと、個人再生など他の債務整理を検討するか、収入を増やすなどして自力で解決せざるを得なくなります。
また、特に悪質な財産隠し行為は「詐欺破産罪」として、10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金、あるいはその両方に処せられる可能性があります(破産法265条1項1号)。
弁護士や裁判所は、他の提出書類や債務者宛の郵便物などから、不自然なお金の流れをチェックして調査をします。
一般的に、提出していない口座に関する情報の存在は判明しますので、ご自身に不利な記載があるものでも漏れなく提出するようにしましょう。
仮に、浪費やギャンブルによる借金があったとしても、しっかり反省をして生活態度を改めることで、免責が許可されることがあります。
4 自己破産の相談は当法人の弁護士へ
自己破産手続きは複雑です。
預金通帳以外の提出書類も多く、それらの書類に不備があれば自己破産の申立てが認められないこともあります。
しかし、専門家である弁護士に任せられることで、安心して自己破産手続きを進めることができます。
当法人には、自己破産の解決実績が多数ございます。
自己破産をはじめとした債務整理に関するご相談は原則として無料ですので、まずはお気軽にご連絡ください。
同時廃止事件と管財事件 破産者名簿とは?自己破産で記載されるデメリット